ウェルスナビ柴山社長さんの記事をインタビューを中心にまとめた。時系列はちょっと適当。
「失われた20年の成長率は「アフガニスタンと同レベル」」
これは、過去25年間の世界経済と日本経済の成長率の違いにある。バブル後、世界経済は約3倍に成長した。このため、拡大したパイをみんなで分け合えた。一方、日本経済は「失われた20年」といわれるとおり、成長率が低かった。柴山氏によると、日本経済のこの20年の経済成長率は「内戦が続くアフガニスタン並の成長率」だったという。
つまり日本では、経済規模が大きくならないので分け合うパイがないのだ。そして、これが冒頭の「成功体験がない」ことの正体だ。
「この期間に株式投資をしていた多くの人は成功体験がないため、『株式投資はうまくいかない』という意識が生まれ、預金してしまうか、短期投資やFXというハイリスク・ハイリターンな金融資産への投資が加速し、『投資は怖い』という意識までも生んでしまったのです」(柴山氏)
「日本人は、もともとモノづくりが得意なのに、金融、教育、医療など、規制に守られた産業分野では、モノづくり力を十分に発揮できていません。一方でウォール街の投資銀行などがエンジニアやデータサイエンティストを大量に採用し、金融におけるモノづくりを進めたことで、差が開いてきてしまいました。シリコンバレーまでもがFinTechの流れの中で金融に参入し、ますます差が開きつつあります。日本では今ようやく、金融、教育、医療などがモノづくり、サービスづくりの対象と認識され、テクノロジーを使って革新を起こすことができると考えられ始めています」
「英国などは、製造業でうまく立ちいかなくなった教訓を生かして、金融業、そしてFinTechを推進してきた側面があります。さまざまな日本のモノやサービスは世界中で称賛されてきました。それに比べ、オンラインバンキングや病院が遅れているのはなぜなのかと、海外の人は不思議に思っています。こうしたギャップを埋め、優れている方にレベルを合わせていく。これをやっていくべきだと思います。本家本元の日本に、できないわけはありません」
マメタスの基本的な考え方は、「日々の買い物で生じる『おつり』を積み立て、貯まったお金をロボットがアルゴリズム運用する」というもの。会計計算にクレジットカードを使うため、実際に現金のおつりが発生しているわけではないが、比較的少額で、気軽に資産運用をはじめられる点がユニークだ(利用開始には少し手順がいる。後ほど解説)。
――誰もが低コストで買える金融商品で、平均を大きく上回る結果が出たのはどうしてなのかが気になります。
それは、毎月の積立を続けながら“ほったらかし”にしていたから。
個人投資家は、相場が上昇すると追いかけるように買いに走ったり、急落すると怖くなって売ってしまったり、どうしても感情に振り回されてしまいがちです。結果、判断を誤って「高値で買って、安値で売る」という行動をとってしまうことも。
例えば、なんらかの金融ショックで株価が30%下落すると、「これ以上、損失が大きくなってはたまらない」と、慌てて手放してしまう人がいます。ここで3割の損を確定させて、相場が回復した時にようやく買い戻すというようなことをしていると、6%の利回りであっても、この損を回復するために5年以上かかってしまいます。
もし、ここで何もせずにいれば、こうしたロスが生じることはありません。そして、積立で追加投資をしていれば、安くなった局面で多くを仕込めるので、さらに利益を大きくすることもできます。
ちなみに義母も、リーマンショックの時はさすがに狼狽して、金融機関に「今、売ったほうがいいのではないか」と相談したそうです。
しかし、その電話を受けた担当者は、「過去にもたくさんの金融危機が存在し、相場は大きな下落を繰り返してきましたが、すべて乗り越えてきました。今は売る時ではなく、資金の余裕があるのであれば、むしろ追加投資する時ですよ」と止められたそう。これは大正解の対応で、良心的な金融機関だと感心しました。
WealthNaviの資産運用アルゴリズムはETF(上場投資信託)を中心としたパッシブ投資を行う。国際分散投資だ。ノーベル賞を受賞したハリー・マーコビッツ氏の『ポートフォリオ理論』などに基づく資産運用であり、同じリスク水準で期待できるリターン(収益)の高い組み合わせを算出するという。柴山氏は米マッキンゼーで、10兆円もの運用資産をもつ顧客を相手に、リスク管理や資産運用のアルゴリズム作りをサポートしてきた。
マッキンゼーにいた頃は、お金のことを考えなくてよいぶん、人生における本質的な問題に集中することができました。収入面の制約条件が外れたことで、「自分が本当にやるべきことはなんだろう」「人生にもっと大事なことはなんだろう」と考えられるようになったのです。
一方、貧しい暮らしを経験したことで「お金がなくても、なんとかやっていける」という感覚を持つこともできました。日本でスタートアップに挑戦すると収入が極端に減るケースが多いのですが、それでも起業に踏み切れたのは当時の経験があったおかげです。企業経営においては、より本質的なお金の使い道は何かをつねにシビアに考えています。
海外の資産運用では、まず基本形となるポートフォリオ(資産配分)を構築したうえで、資産運用マネージャーの判断により、特定の国や地域、投資テーマやセクター、銘柄に多少の重みづけをします。結果、最初のポートフォリオ構築によって、全体の運用成績の8~9割が決まります。つまり、ポートフォリオがメインディッシュで、個別銘柄はスパイスのようなものです。
ところが、日本では前述のとおり、個人金融資産の半分以上が預貯金に集中する一方で、個人投資家がリスク性の高い金融商品の短期売買を繰り返していたり、個別銘柄を中心に投資をしていたり、FX中心の資産運用を行っているのです。メインディッシュとスパイスが見事に逆転し、適切なリスク管理が行われていません。
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